新・ものづくりへの挑戦
【久門紙器工業】 段ボールの製造から、パッケージ・梱包の総合代理店への挑戦!

大阪府枚方市には、ものづくり企業が集積する工業団地が七つある。その一つ、枚方工業団地の一角に久門紙器工業がある。

久門紙器工業は1959年(昭和34年)に久門商店の名前で創業、1964年に法人化し今年で設立50周年を迎えた、段ボールシートとケースの製造会社だ。
シートとケースの一環生産により、信頼性の高いダンボールケースを実現。最高ランクの原紙を使用し、高品質ボールシートを低コスト・短納期で提供、多品種・小ロットでも即応する。
現在では約1万3千種類の段ボールを製造する。

「商品を運ぶ段ボールは時代とともに、その形や機能が様々に変化してきました。そして、段ボールがないと生活が成り立たないくらい、あちらこちらで段ボールは使われています。それゆえ、段ボールに対するニーズも多様化しています。商品にピッタリと沿い固定する形、配送管理のバーコード印刷、段ボールごと蓋を開けて商品を展示するもの、など。このようなニーズに応えることは今やできて当たり前であり、応えられないと会社の存続にかかわります。」と、2代目経営者である久門哲男社長は、段ボール業界の移り変わりと厳しさについて語る。

では、どのようにしてニーズを把握し応えてきたのか。

顧客とのコミュニケーションを重視、信頼を獲得

取引先は約300社に及ぶ。
まれにしか注文のない取引先もあるが、一度受注した顧客情報は段ボールの仕様とともにすべてコンピュータで管理しているという。
営業は管理情報から、取引先の過去の要望を把握した上で相談に応じることができるのである。以前と同じものが欲しいと言われたらすぐに製造でき、また、これまでの要望を元に新たな提案へとつなげることもできるのである。
コンピュータ管理で社内の業務効率化ができるのはもちろん、顧客の立場からも「自社の事をわかってもらえている」安心感が大きい。
コミュニケーションが円滑に進み、要望も話しやすくなる。

一方、工場では、今年3月に、段ボールの印刷検査機を導入予定である。
段ボールは表面がデコボコしている。既に印刷精度の高い印刷機を導入しているが、どうしても"ズレ"や"かすれ"が起きる。段ボールは大量生産されるので一つずつ人が目視で検査するには限界がある。何とか自動的に検査ができないか検討を進めた。
結果、導入する印刷検査機は、印刷の1mmのズレをカメラでチェックし不良品に水を付けるというもの。品質の厳しいバーコードも確実にチェックされる。水が付いたものと、その前後に製造されたものは、人が目視で確認を行うという念を入れる。
品質を支える最先端の技術が駆使された設備への投資も、顧客の信頼を得る大事な要素だ。

そして何よりも、何か話したくなる、何か聞いてもらいたくなる  - お客様をそんな気分にさせる取り組みがある。

それは、会社入り口のカウンターを訪れたときにわかる。事務所の全員が立ち上がり、お客様に「いらっしゃいませ!」と挨拶をする。営業だけでなく事務も開発も一斉にである。

「忙しい作業中に手を止めるのは効率が悪いように思えるかもしれないが、 この時間がとても大事です。若い頃、訪問先で誰にも対応してもらえなかったことがあります。そのとき受けた何ともイヤな気分をお客様には感じてほしくないと思っています。どのようなお客様が来られるかわからない、近所の方が段ボール1つを求めて来られるかもしれないし、お得意先様が大量発注に来られるかもしれません。しかし、どのような方でも、何かに困って段ボールを求めていらっしゃる大切なお客様です。挨拶は基本です。」と久門社長は話す。

このような一つ一つの積み重ねが信頼へとつながり、その信頼関係の上に成り立つコミュニケーションの中でニーズを掘り下げているのだ。

これまでに築いた信頼が、すごい強みだと気づく

ある時、取引先から段ボール以外の悩みを打ち明けられる。「今使っている商品を入れるOP袋は横には伸びるが縦には伸びない、どちらにも伸びるものはないか」と。スタッフの一人が、お客様の困り事を何とか解決したい一心でインターネットで検索した。目的のOP袋が見つかったのだが、なんと、その会社は自社の取引先の1つであった。さっそく両社に連絡し、OP袋は久門紙器工業を介して受け渡された。お客様の悩みを解決することができ、一方で、お客様の売上にも貢献できた。

その後も、錆に強い梱包材が欲しいという相談を受け、営業が取引先の中から錆に強い素材を扱う会社を探し出し提案したり、倉庫業のお客様より坪単価を上げたいという相談を受け、整理棚を段ボールで作りあげたりした。今では、梱包して化粧箱とセットにし段ボールに入れ、物流まで担ってもらえないか、という相談まで舞い込んでいる。

お客様に最適な段ボールを提案するには段ボールに入れる中身をよく知ることが必要。営業会議で検討を重ねるうちに、お客様の商品についての情報が自然と豊富になっていく。段ボールだけでは解決できない相談を受けても、取引のあるお客様の商品の中から適切なものを組み合わせることによって、解決策を提案できるようになっていた。

これまでに信頼関係が成り立っているがゆえ、相談が寄せられ、そして商品を提供するお客様も

快く受けてくださる。これはすごい強みだと気づいた。

今後は信頼でつながる取引先とのネットワークを活かして 『パッケージ・梱包の総合代理店』 を目指す

久門社長は新たなチャレンジについて語る。

「段ボールシートとケースの製造がメインであることに変わりはなく、これからも用途の広がる段ボールへの様々な要望に応えていくが、どうしても価格競争になりがち。そんな中で、この 『取引先どうしのマッチングにより、パッケージや梱包を総合的に企画し提案する』 ことは、久門紙器工業らしい強みを活かした取り組みであり、プラスαの付加価値としてお客様に認められれば、価格ではない勝負ができます。
この取り組みを始めてみると、“梱包材は、段ボール、OP袋、封筒など、それぞれ別々の会社が製造しているため、商品に適した梱包材をすべて集めるのが難しく、実は、どこに相談してよいかわからなかった”という声をよく聞くようになりました。今後は、本格的に 『パッケージ・梱包の総合代理店』 を目指したいと思います。」

取締役の小川氏も意欲を燃やす。
「お客様から問い合わせがくるには必ず理由があります。その理由をしっかりと聞き、約300社の取引先とマッチングを行います。解決するには、もっと良くするにはと考え提案します。そうすることで、また相談しようと思っていただける、さらには他にも紹介したくなる、お客様のその先のお客様を紹介していただける、そんなサービスにしたいと思います。」

そして最後に、久門社長は、

「日本、世の中は変わっていく。対応していかなければ企業は存続できない。しかし、先に走りすぎても、変わりすぎても、うまくいかない。変わっていることがわからなければ、また意味がない。一昨年より去年、去年より今年と、変わったなとわかる変わり方を、少しずつ、着実にやっていきたい。」と締めくくった。

久門紙器工業株式会社ホームページ >> https://www.kumon-shiki.com/

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