7回目の今回は、枚方東部企業団地に本社のある株式会社光栄プロテックさんにおじゃまします!
光栄プロテックさんは金属意匠塗装の会社ですが、ただの塗装じゃないんです。渋い光沢やキラキラ光る特殊塗装が武器なんだって!
きっと、天の川みたいにきれいなんだろうなあ。
そんな特殊技術を持つ社員さんを支える社員食堂もあるとか。とっても美味しいというウワサ!さっそくお話を聞いてみましょう!
塗装は、家族や友人に「すごいでしょ?!」って自慢できる仕事です
光栄プロテックさんのカタログには、聞き慣れない「硫化いぶし色仕上げ」とか、「カラークリヤ塗装」という塗装方法の名称のほか、施工した現場の写真がたくさん載っていますね。本社には、塗装した金属塗板を並べたショールームもあるんですね?!
三田社長 「百聞は一見に如かず」。ショールームをご案内します。写真だけでは分からない色味や光具合、風合いをご覧いただけます。弊社はパート従業員を入れて約30名の少数精鋭ぞろい。お客様には技術の良さをきちんと伝え、ご納得いただきたいと思っています。
すごい!大理石のようだったり、鏡みたいにピカピカだったり!どんな場所に使われてるんですか?
三田社長 高級ブランド店の顔となるファサード(建物の正面外装)や内装、またエレベーターなどの設備塗装や、関東を中心に鉄道車両の手すりや内装も手がけています。定期的に取り替えが必要な仕事と、そうでない仕事の両方を請負い、仕事が回るよう工夫をしています。
自分たちの仕事の成果が、日常生活で見えるなんて素敵ですね!
三田社長 そうです。見えるんです。以前社員旅行で京都へ行ったとき、乗った電車に私たちが塗装したモノがあって、景色そっちのけでみんなで喜んでその製品の写真を撮りました。
メリットは、なんといっても周囲に自慢できることです。「これ、あなたがやったの?すごい!」なんて言われると、うれしいじゃないですか。おのずと、頑張って技術を磨こうという気になりますよね。塗装はやりがいがあり、達成感を味わえて、自分の仕事に誇りが持てる仕事なのです。
Hermès表参道店
[カラークリア塗装]
OMO7大阪by星野リゾート
[リン酸風仕上げ]
ものづくり業界の人手不足を改善したい
三田社長が入社したのは約30年前だそうですが、当時から会社は変わりましたか?
三田社長 私は2代目です。創業者の娘で、現在事務長を務めるのが私の妻です。結婚したとき、私は大手生命保険会社勤務でしたが、創業者から「そろそろ」と声をかけられ26歳で光栄プロテックに入りました。
しかし入った当時は昔気質の職人さん3~4人だけで、しかも「技術は見て盗むもの」。教えてもらえないし、褒めてもくれません(笑)。保険会社ではイチから仕事を教わった私にはショックでした。
新人教育のやり方が180度違ったわけですね。
三田社長 私は何とか食らいつきましたが、諦めた職人の卵も大勢いたかも知れません。これがものづくり業界の、人手不足の一因と考えています。
特に製造業の社長は、24時間働ける「仕事の虫」の方が多いです。だからこそ社長をやれるし素晴らしいのですが、社長自らそのような働き方では部下がついてこられず一代で廃業してしまいます。
私たちはこの数年、会社組織として今後も長く続けるにはどうすれば良いか、社内改革に取り組んできました。
「社員食堂はサイコー!」光栄プロテックが取り組んだ社内改革とは
光栄プロテックでは栄養満点の「社員食堂」が評判だとか?入社3年目の野田さんと川口さん、そして入って9カ月の道下さんに、インタビュー!まず社員食堂の感想から聞いてみましょう!
野田 最高においしいです!リクエストも聞いてくださるしアイデア料理も出ます。これでワンコインなんて信じられません。感謝ですね。
川口 デザートまで出る日もあるし、「お腹すいたら食べてね」と炊き込みご飯を握って差し入れてくださることもあるんですよ。
道下 苦手な食材も、社員食堂のメニューだとおいしく食べられます。食堂を利用する日をあらかじめ申請しているので、人数分以上作ることなく食品ロスも少ないと聞いています。
皆さんはもともと塗装の専門家ですか?
野田 私は化学の専門学校出身で有機溶剤の知識はありましたが、塗装はOJTでいちから教わりました。
道下 私は情報系の大学出身で2年間、IT企業で技術者として働いてからの転職です。異業種からの転職でしたが、入社後のOJTで一通り学ぶことができました。大阪工場が3ヶ所あるんですが、順に回り、下処理や塗装をきれいにする作業などをやらせてもらいました。最後の千葉工場での研修で、接客の仕方を学びました。今は営業を担当しているのですが、ITの知識を生かしながら自社の魅力を発信していきたいと思っています。
川口 私は芸術系大学でマンガと立体造形を学びました。卒業して他社に就職しましたが、「手を動かして作る仕事がしたい」と光栄プロテックに転職しました。多様な種類の塗装で、自分も挑戦したいものが見つかると思ったからですが、自分の得意や技術を生かせ、没頭して作業できるので、毎日楽しいです。
塗装を行う前の下処理を実施しているところ
最後の仕上げとなる塗装を行っているところ
20代の社員3人にもそれぞれ責任のある仕事があり、積極的に取り組んでおられるのですね。ありがとうございました!
今度は三田事務長にも入っていただいて話を伺います。なぜ社員食堂を作ったのですか?
三田社長 私たちの仕事は体力勝負なのに、一人暮らしの社員のランチはおにぎり1個に麺類だけ。それを見て危機感を持ったんです。
三田事務長 そこで私の知り合いで、食育に熱心な料理教室の先生に、栄養バランスが良く旬の野菜を取り入れたメニューを提供する食堂を作りたいとご相談したところ、「ただの賄いではなく、食生活の楽しさや大切さを伝えられるなら」と引き受けてくださいました。
今、その先生を含めた4人の方がメニューを作ってくださいます。12時のランチに合わせて朝10時から調理を始め、出来立ての食事12~3人分を用意してくれています。
三田社長 うちは人数が少ないので、メニューは1種類。その代わり、毎日変わります。社員の好物をメニューに取り入れたり、デザートが出たり、誕生日にはバースデーケーキがあったりと毎日楽しみです。美味しいのはもちろんのこと、愛情を感じられるこの社員食堂が、社員の定着に一役買っているように思います。
社員さんが羨ましい~!まるで専属の栄養士さんがいるみたいです!
さらに残業をなくして、心の健康にも配慮しているそうですね。
三田社長 恥ずかしい話ですが、数年前は弊社も22時、23時まで働くのが当たり前でした。しかしそのような職場に、余暇を大切にする若者は定着するはずがない。
そこで3年ほど前に、残業は最長で21時までと決めました。以来20時まで、19時半まで、19時10分と次第に短縮し、現在は18時30分までです。それ以降の残業には、申請と許可が必要です。
同時に短時間でも効率よく、生産性を上げる仕事のやり方を勉強し実践してきました。おかげでスタートした3年前から売り上げは落ちていません。
皆さんは、有給休暇の取得状況はどうですか?
三田社長 まず部長や工場長に率先して取ってもらい、「有給休暇は良いこと」と意識改革から始めました。さらに事務長の提案で、給与明細に有給休暇の残数を記載しました。業務の繁忙に応じて、計画的に取得してもらい、リフレッシュと、家族との時間に充ててもらっています。
社員食堂「dining Forest of Koei」
食生活の楽しさを伝えたいと、出来立てを提供しているそうです!
若者採用は小手先だけの準備ではダメ じゃあどうすれば?
新卒採用に取り組まれた理由を教えてください。
三田事務長 20年ほど前に採用した高卒社員が今、工場長や班長など会社の中核になってくれています。彼らの成長は、会社が少しずつ理念やルール作りをしてきた時期と重なっていて、会社の考えに共感してくれているんです。その彼らが、同じ新卒社員へ理念やルールを教育してくれたら、会社としてより成長が見込めるのではと、今回大卒に絞って募集をしようと提案しました。
三田社長 私は最初、「新卒で大卒者は来ないよ」って言ったんです。
三田事務長 でも私は採用の現状や、自分たちの仕事に大学生が響かない理由を知りたかったので、1度挑戦させてほしいと頼みました。
それが昨年1月で、約2カ月で大手企業のように新卒向け求人サイトで募集をかける準備をしました。驚いたのは、アップするやいなや30人の方が弊社の仕事内容を見に来てくれたことです。そこで「社員食堂」など、より社内の雰囲気が伝わるワードをサイトに追加し、そのかいあって、5月のオンライン会社説明会に70人以上も来ていただきました。
えぇっ70人以上?! 多いですね!
三田社長 コロナ禍でのオンライン説明会は、人を割けない中小企業にピッタリだったのが大きかったです。
三田事務長 GW前に、2人に内定を出しました。最初はゼネコン志望だったという1人は、「ゼネコンを相手に仕事をすると聞き、大手で埋もれるより光栄プロテックで自分を生かそうと思った」と、心の内を話してくれました。これも1対1だから聞き出せたオンラインの良さですね。彼らには、入社までのフォローもやらせてもらっています。
やってみて、若い人が会社の何に魅力を感じるかがわかりました。「会社が、自分という人間をどれだけ大事にしてくれるか」です。それは残業をなくしたり、社員食堂を作ったりした私たちの取り組みにうまくマッチしたと思います。
三田社長 あとは彼らを失望させないよう、今の社員のレベルアップを図りたいと思っています。
三田事務長 次世代に技術と人間性を伝え、育成する仕組みづくりを意識しています。製造業の弊社が、約6カ月かけてステップを踏みながらじっくり技術を教えるOJTもその一環です。OJTは、今の社員が「教え方」を学ぶ教育にもなります。
三田社長 新入社員が入ることによって、いろんな角度から既存の社員が鍛えられます。技術面だけでなく、悩みが生じたときに「お前が必要なんだ」と声をかけるなどして、皆で支えながら成長してほしいと思っています。慕われるような人間作りも職場を通じて学んでくれたらうれしいです。
若い人の採用は付け焼刃ではダメなのです。問題は出てくるでしょうけれど、その都度対応していかなければ。私たちもまだまだ勉強です。
明日の段取りをベテランと若手社員で打ち合わせ中!
塗装した製品の検品及び梱包作業を行っている最中らしい!
「100年企業」を目指して
三田社長 社長をはじめとしたトップは、若い人の要望をしっかりつかむことが大切です。今の若い人は「自分らしくいられる職場」や、「自分はここで何ができるか」を見ているので、それらをしっかり示すことです。
三田社長の、ものづくりへの思いを教えてください。
三田社長 これは私の夢ですが、将来は自分の会社の社員だけでなく、同業他社の社員にも技術を教えられるような、後輩を育成する機関を作りたいと思っています。
昔の職人さんは一人黙々と腕を磨いていました。しかしそれでは技術が継承されず、一代で途絶えます。もったいないことです。
実際、塗装技術は教えられる人が少ないんです。それに体力仕事なので、ある程度の年齢になると難しくなります。
でも腕はたしか。その技を次世代に伝えるという風に、熟練職人のキャリアを活かすステージを整えたいのです。
おおっ!技の循環ですね。
三田社長 大企業なら当たり前の仕組みです。それを中小企業でも整えたい。そうすれば一代で終わらず、長く続く会社ができるんじゃないかと思うんです。今、懸命に弊社の中間層を育てているのは、そのためです。トップが倒れたらその会社は終わり、ではいけません。
彼らが育てば、社長がいなくても会社は安泰です。
私は「100年企業」を目指しています。私は2代目なので、4代目くらいまでの道筋はつけていこうと考えています。それ以降は4代目に任せますよ。
経済産業省の「日本ものづくり大賞」のチャレンジもそうです。技術だけでなく会社のことも熟知していないといけない。今は先代・私が生み出した技術でやっているので、次はお前らやぞ!と。
自分たちで次世代に繋がるものを発明してほしい。こういう小さな会社でも頑張れば何とかなるという経験もしてほしいし、彼らが成長する良いきっかけになるのではと思っています。
先を見通しながら、会社を動かしているんですね。「日本ものづくり大賞」受賞の知らせを楽しみにしています!
三田社長 「100年先を見て今を考えろ」とは、創業者の言葉です。
まずゴールを決める。そこから逆算して、いつまでにこれをやろうと青写真を描く。目標を決めておかなければ、絶対にゴールへたどり着かないぞと言われました。
青写真。つまり将来設計ですよね。
三田社長 社員にも言っています。未来のゴールでなくて良い、今日1日で良いから「ここまでやり切ろう」と決めることです。すると躍動感を持って、能動的に仕事ができますよ。
今日一日のゴール設定なら、自分もできそうです!最後に、これからの中小企業の若い人にエールをお願いします。
三田社長 中小企業が生き残っていくポイントは、小さな隙間市場で圧倒的なシェアを誇るニッチトップです。これからの社員には、そういう仕事のタネを、ぜひ見つけてほしいと思っています。
希望にあふれる素敵なお話を、ありがとうございました。
まとめ!光栄プロテックさんってこんな会社!?
- 社員の皆さん元気!挨拶が気持ちいいです!
- 街中で自分が塗装したモノに出会えて自慢できそう!
- 愛あるやさしさと厳しさのある職場!
- 日本ものづくり大賞受賞も間近!?
※レポーターの勝手な推測です!本当のところはこちらでどうぞ!