9回目の今回は、枚方市大峰南町にあるユニチカガラスビーズ株式会社さんにおじゃましました!
「ガラスビーズ」と聞くと、思わず手芸用の穴あきビーズや、装飾用のキラキラするビーズを思い浮かべる人も多いかもしれませんね。でもユニチカガラスビーズさんは、ガラスビーズによって生み出される「光の反射」を利用することで、私たちの安全を守ってくれているんだって!
なぜ、ガラスビーズが私たちの安全を守っているの?どんな人が働いているの?お話を聞いてきました!
ガラスビーズは私たちの安全を守っている!?
今日はよろしくお願いします!うわあ、とってもキラキラ光ってきれいですね。これがユニチカガラスビーズさんで作っている、ガラスのビーズですか?
山田社長 そうです。ガラスビーズは、一粒一粒指でつまめる大きさのものや、目で見てもそれとわからないほど小さなものもあります。こちらもガラスビーズなんですよ。砂粒みたいでしょう?
本当だ!?砂みたいだけど、これがガラスビーズなんですか?大きいのから小さいのまで、いろいろあるけれど、何に使うんですか?
山田社長 皆さんが毎日歩く道路には、センターラインや横断歩道、路側帯などが白い線で引かれていますよね。昼間はよく見えるけど、夜間や雨の日もよく見えます。それは、車のヘッドライトが当たると、ドライバーからは白線が光っているようにくっきり見えるからです。なぜかと言うと、白線の塗料の表面や中にガラスビーズが使われているからなのです。白線の表面にあるガラスビーズにヘッドライトが当たると、光がガラスビーズ一粒一粒の中で反射し、白い線がくっきり見えます。おかげでドライバーは、夜も安心して運転できるんですよ。
そうか。白線が光を出しているわけじゃなくて、ガラスビーズがヘッドライトの光を反射しているんですね!
ひこぼしくんにガラスビーズの役割を説明する山田社長
山田社長 そうなんです、反射しているんです。白線だけじゃないですよ。標識や道路に置かれているカラーコーンにもガラスビーズが使われていますし、工事現場の人が着るベストにも入っています。だから暗闇の中でも浮かび上がって、ドライバーからよく見えるんです。
ベストの光る部分にガラスビーズが入っているんですね。うーん、顕微鏡で見ないと全然わかりません。
山田社長 そうでしょう。本当に小さい粒です。しかもこの反射は、光の入ってきた方向に反射します。「再帰性反射」と言いますが、そのおかげで、ヘッドライトで浮かび上がった白線や標識が、ドライバーにもハッキリ見えるんですね。これが別の方向に反射するとぼんやりして、ドライバーに注意を促せません。
ガラスビーズ入りの塗料を使用した白線は夜間や雨の日もハッキリ見える
ガラスビーズが使われている安全ベストの反射材
ガラスビーズが使われた標識はライトが当たると光って見えやすくなる
標識を持つのは管理部の真柄部長
ガラスビーズに入射した光は、屈折・反射して再び入射した方向に帰るため、光って見える
極小サイズもそろえられる技術力!ガラスビーズの可能性は無限大
道路以外にも、ガラスビーズは利用されていますか?
山田社長 研磨材にも使われています。ブラスト用と言うのですが、例えば、金属やプラスチックの表面の艶消しですね。マットな仕上がりで高級感が出ますよ。ガラスビーズでブラスト加工するメリットは、球体なので噴きつけた際に表面を必要以上に傷つけないこと、凸凹を作るだけなので、表面の印刷された文字が消えません。金型製作の時のバリ取りや、金属クリーニング加工にも利用いただいています。
へえ!ガラスビーズって、いろいろな目的でさまざまな用途に使われているんですね!
ガラスビーズを噴射するブラスト加工の様子
山田社長 均一なガラス組成で化学的に安定していること。きわめて高い真球度であること。また適度な硬さで無色透明で、着色汚染がないこと。これらの条件がそろった高品質なガラスビーズの特長を利用して、電子部品や精密部品を貼り合わせる時に、接着剤の厚みを正確に制御することにも使われています。極めて小さな粒でもサイズをそろえられる、高い技術を持っているからこそできることです。
目で見えないほど小さなガラスビーズの大きさをそろえるって本当にすごいです!しかも、それが枚方で生まれているんですね!
山田社長 そうなんです。ガラスであることと丸いという特長を生かして、これからも私たちの思いもよらない分野で必要とされるでしょう。では、ガラスビーズを生産する工場を技術部の田中が案内しますね。
粒径が数十μm(マイクロメートル)のガラスビーズの拡大写真
1μm = 0.001mm
ずっと前からSDGs 自然の力を利用して球を作る
田中さん 実は道路用に使うガラスビーズの約85%が、建物を取り壊す際に出る窓ガラスなどの廃材です。なかでも質のいいものを専門業者から納品してもらっていて、南は九州、北は北陸の富山県や神奈川県から毎日25~30トンほどのガラスの廃材が集まっています。
世の中がSDGsの世界を目指す前から、リサイクルをしていたわけですね?
田中さん そうです。もう50年前からやっています。このガラス廃材をショベルローダーで生産設備に投入します。
それからどうするんですか?
田中さん 投入したガラスを乾燥させて粉砕し、細かくなったガラスをふるいにかけて、大きさ別に仕分けします。その後、炉で熱して表面が柔らかくなったガラスの細かな破片を、下からバーナーの力で10~15メートルの高さまで噴き上げて丸くするのです。ところで、なぜ噴き上げると丸くなるのか分かりますか?
えーっと……なぜですか?
田中さん 物体が一番安定する形が、球だからです。シャボン玉も、宇宙ステーションの中でこぼした液体も丸くなるでしょう?あれは、表面張力のはたらきによるものです。自然に丸くなる性質を利用して、球体になったガラスを回収し、ふるいにかけ、最終製品の大きさにそろえていきます。
勉強になります!
ガラスビーズの原料、ガラス廃材の山
シルバーの筒状の炉を外から撮影
あの中でガラスが噴き上げられ球体になる。
球体のガラスビーズを"ふるい"にかけ大きさを選別する様子を見学
田中さん 製品になったガラスビーズは、用途別に包装します。道路に引く白線の塗料を作るメーカーや、白線を引く施工業者に納めています。袋や一斗缶に詰める作業は、昔は手作業で行っていました。今は機械が導入されたので、体がずいぶん楽になりました。
腰を痛めなくてすみそうだし、何より早くて効率的ですね。
路面標示塗料用「ユニビーズ」の一斗缶
一斗缶に流し込まれるガラスビーズ
数十kgの缶は機械でラクラク運搬
田中さん ここで、大事な作業があります。出荷前の品質検査です。包装まで終わった製品はサンプルを取り、品質保証室で検査します。品質に問題がないかを確認して、注文に応じて出荷するのです。
わあ。ここで検査しているんですね。
田中さん ここでは道路用途以外にも、うちで作ったすべての製品を検査しています。例えば、決められた数以上に、丸くないものが混ざっていると不合格。出荷できません。
顕微鏡で丹念に、1粒1粒チェックしているんですね。
全体が分かるから積極的に働ける 世の中に役立てる自覚が生まれる
ところで、田中さんは生産工程をよくご存知ですね。普段はどんなお仕事をされてるのですか?
田中さん 技術部生産技術グループで、どのように生産効率を上げるかの検討や、安全対策への提案などを行っています。2020年4月入社で、今年で5年目になります。私は大学院まで無機化学、錯体をテーマに研究していました。ユニチカガラスビーズを知ったのは就職活動のときです。まさかガラスビーズが、道路をはじめさまざまな用途に使われているなんて知らなかったので驚き、強く興味を引かれました。
入社前と入社後とで、ギャップを感じることはありましたか?
田中さん 入社前に、ガラスビーズの生産について説明会で聞いていたので特に感じることはありませんでした。製品開発のフォローに入ることもあるのですが、お客様から、そこで作った全く新しい製品のおかげで性能が上がったという話を聞くと、自分も最新技術の一端に関われたと誇らしく思います。でももっと誇りに思うのが、このユニチカガラスビーズという、陰ながら世の中に役立つものを作っている会社で働けていることです。
技術部生産技術グループの田中さん
とっても誇れるお仕事だと思います!今後、挑戦してみたいことはありますか。
田中さん ガラスビーズの球状化にはさまざまな工程があり、その分だけ装置や技術がありますが、そうした流れの全体を一つの会社の中で見られます。だから仮説を立て、条件を変えて比較検討ができ、「あの現象をこちらで応用できないか」といった提案やアイデアも生まれやすいと思います。ガラスビーズについてはまだまだ勉強中ですが、いろいろと新しい分野へ新製品を提供できるよう挑戦したいです。また工場の作業環境が暑かったり寒かったりと体に負担がかかることも多いので、工夫して負担軽減や、工場内のデジタル化にも挑戦してみたいですね。
職場の雰囲気では、ギャップを感じることはありましたか?
田中さん ありませんでした。休憩時間は部署を超えて和気あいあいと情報交換ができますし、社内イベントもあり交流のある会社だと思います。
真柄部長 ゴールデンウィーク、お盆、年末年始の休み前に、全従業員参加の研修会を行なっています。研修会のあとは、交流会等の社内イベントがあり、いっしょに働く仲間との親睦を深める良い機会になっています。世の中、全員参加型の社内イベントは少なくなりがちと聞きますが、みんなで一つの物を作る、うちの会社の風土づくりにはとても良い影響があります。
従業員を大事にする!それが会社の発展につながる
山田社長は、従業員にどのような思いをお持ちですか?
山田社長 私は「従業員を大事にします」と、日頃からみんなに伝えています。ケガをしてほしくない。だから安全対策や安全箇所の総点検には力を入れますし、「自分は大事にされてない」と思ったら、つまり、危ない箇所や不安なことがあれば改善するので提案してほしいとお願いしています。2014年から10年間で、提案件数は1万7千件以上にものぼっています。それらを1つ1つ検討した上で、制度や仕組みを見直したり整えたりしています。最近の夏は本当に暑くて熱中症対策にも力を入れています。以前から対象者には暑熱手当てを出していましたが、2023年から猛暑日手当も出すようにしました。
本当に従業員の皆さんを大事にされています!でも、なぜそこまでするのですか?
山田社長 私の知る限り、従業員がケガをしない会社は長続きするからです。終身雇用という言葉も聞かなくなりましたが、私はこの会社を、生涯働くのに十分価値のある会社にしたいと取り組んでいます。だから従業員にも、会社を大事に思ってほしいと伝えています。互いの厚い信頼が良い職場環境を育み、会社を発展させていくのだと信じています。
まとめ!ユニチカガラスビーズさんってこんな会社!?
- 50年も前から廃ガラスを製品化してるって、SDGsの先駆者⁉
- 厳しくもあたたかいチームワークが感じられる!
- 若手が挑戦しやすい雰囲気、さすが「若者の採用や育成を積極的に行っている」ユースエール認定企業!
※レポーターの勝手な推測です!本当のところはこちらでどうぞ!
ユニチカガラスビーズ株式会社