情熱ものづくりインタビュー
恩地食品株式会社

世界では、大阪のおうどんがスタンダードになる

恩地食品株式会社 恩地宏昌

味の安定感なら万能、ストレートだし

――――どんな商品が貴社の売れ筋ですか

「京うどん」ですね。中細の麺で、滑らかさがありながらコシがあって切れにくいのが特徴です。特に中高年の方に人気があります。

それから「本鰹だし」のおだしです。うちは、だしのシェアの方が大きいですよ。

弊社ホームページにも「本鰹だし」を使ったレシピを載せていますけれど、関西の主婦の方は、知恵が豊富なので、だし巻きやおでんや茶碗蒸しなどいろんなものにうちのだしを使っておられます。

人づてに知らせてもらった話ですが、旧家に嫁がれた女性が、たけのこを炊くのに、どうしてもお姑さんや旦那様が満足してくれる味が出せないと困っておられたところ、うちのだしをお使いになったら、凄く評判が良かったそうで、嫁としての株も上がったと感激されていたそうです。嬉しいですね。

ご家庭の味があるので、多少しょうゆやみりんを足したりすることもあるでしょうけれど、基本、関西は、ストレートだしの市場なのです。関東は濃縮。濃縮は、日持ちもする反面、化学調味料が必要だし、薄め方や水によって味が変わるから、やはり味の安定性でいったらストレートだしになります。

女性の感性に訴える商品開発

――――女性だけの商品開発プロジェクトをされていたそうですが、商品開発の取り組みや具体的なことを教えてください。

弊社は、ひとつの部署が商品開発しているのではなく、横断的な組織を作っています。
もちろん、マーケティング部が中心になって 営業、研究開発、製造現場が、それぞれのノウハウや情報を持ちよります。

ただ、チームそのものが男性社会的なため、女性の声が届いていないのではないかという思いがありました。
それで、創業85周年の第1回目に入社3年目の女性をリーダーにした女性のみのプロジェクトを作りました。
まず、彼女達は売り場を見に行きましたが、第一声が、「うどんやお豆腐売り場は、"可愛さが無い"ですね。」でした。「はあ~?可愛さ?」と思いました。そんな発想は無かったなあと。

野菜売り場で買い物するのも殆ど女性なので、女性の感性に訴えるものを考えて、ソースメーカーさんと開発したトマトをベースにしたソースに、食感を楽しんでもらおうとクルトンなどを入れたものが出来ました。それをバイヤーにプレゼンしたら評判良く、いろんなところに置いてもらいました。

第2回目は、ゆずのジュレを使ったうどんです。これは、関西テレビの番組ウラマヨでも紹介され、私もスタジオに行って出演しました(2012年5月12日放送)。
これらのプロジェクトは解散しましたが、やはり女性の感性は大事ですので、またやりたいです。

世界の食材と相性がいいうどん

――――大阪のうどん文化を世界に発信していきたいとおっしゃっていますが、今後、経営者として次世代に伝えたいとことはどんなことですか?

七夕を知らない人は全国的にいないけれど、七夕の発祥地が枚方、交野だということを殆どの人は、知らないわけで、まず、そういうことを地元の人が知ること。子供たちも七夕伝説ってそうだったんだと知ることによって地元への誇りも生まれるし枚方の郷土愛も育まれていくのではないでしょうか。
天の川紅白そうめんもそうですが、地元コンビ二さんに期間限定で置いてもらったりしています。
こうした地元との連携や活動があった上で、世界への発信だと考えています。

今、フランスのJapan Expoに出展しているのですが、プロジェクトチームが、豆腐、こんにゃく、漬物、麺といういわゆる和日配の分野でアライアンスを組んでいます。
うちは、うどんパスタを提案しています。5,6分ゆがいてソース絡めたら、もっちり感があってとても旨いのです。

――――うどんの麺をそのまま洋風に提案されているのですね。普通のパスタより柔らかい感じですか?

乾パスタではなく生パスタとしてのうどんです。
うどんの麺は、タイならトムヤンクン、インドならカレー、現地の食文化とどのようにコラボするかが大事です。
そして、うどんは、どんなものにでも相性が良いのです。

「豆腐姫」「こんにゃく姫」「うどん姫」…としてキャラも作っているので、アニメで和日配を紹介するためアニメグループも一緒にフランスExpoに行っています。
漫画で説明したものをちらしにして配り、BtoBで、あちらのレストランに卸すことを計画しているのです。

――――個人的に一番好きなうどんは何ですか?

我が社のきしめん。口の中に入れたらボリューム感がある。
しゃぶしゃぶ、なべでもコシが落ちない。角が四角いうどんは角から水分が入っていきやすいけれど、角が丸くなっているのでもっちり感が持続するし、伸びないです。

モノを売るのではなく、ライフスタイルを提案する

――――社員さんの環境作りで心がけられていることや方針などをお聞かせください。

私が30代で京都工場にいた頃、営業は、量販店などをエリア制担当にしていたのをチェーン店別に変えました。
やはり、本部で主な商談をするのでエリア制にしていると、情報が、行き渡らないのです。自分が決めた商談は、責任を持って全店にアナウンスするやり方にしました。

このように、自分が責任者として仕事にやりがいを持って楽しくやること。命令されてやるというよりは、企画とか提案とか自分が仕事を生み出す意識です。そこに責任も出てくる。でも責任は負うものではなく生み出すものだと捉えて欲しいです。

そして、そのような気風や文化を作るのはトップ、経営者の仕事なので、失敗を恐れず、チャレンジするようにと言っています。

――――影響されたモノとか考え方、出来事などあったら教えてください。

大学を卒業してタカギベーカリー(アンデルセングループ)に勤めていた3年間、モノを売るのではなく、ライフスタイルを提案したり、安く売ることより販売促進を考えることなど、刺激的で、学びになりました。

広島アンデルセンは、日本一大きなパン屋さんで、ブライダルのパーティ会場もある店です。
私が一番驚いて感心したのは、広島のアンデルセンの店は、店内に花屋があること。
なぜ、パン屋の中で花を売っているのか?パンを中心として花がある食卓を提案されているのです。

うちの会社も麺を中心としたライフスタイルを提案していきたいと思っています。
ただモノを売っているのではなく、大阪のうどん文化を担っているという意識を社員にも持って欲しいといっています。
そこからやりがいや自信、誇りも生まれると思いますから。
地元に愛されながら、社員が成長することで会社も成長していく、そしてうどん文化を世界に発信する。
そんな企業を目指しています。

――――座右の銘があれば教えてください。

「継続こそ力なり。」です。

――――お忙しいなか、お話いただきありがとうございました。

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