情熱ものづくりインタビュー
くらわんか餅 NAOKI
本物の価値を伝えたい。くらわんか文化を今に。
第三回目のインタビューは、枚方で有名な和菓子「くらわんか餅 NAOKI」の代表、森野直樹さんにお話を伺いました。
くらわんか文化を今に。
枚方の歴史を語るうえで欠かせないのが「くらわんか舟」。江戸時代の昔、茶船、あるいは煮売舟といわれる小船で、淀川筋の独占営業権を得て、船客目当てに餡餅、ごぼう汁、巻き寿司、酒などを売って商いをした。遠くは江戸の方まで、その名は知られていました。
枚方の住宅街の一角で、今なお“くらわんか”の伝統の味を守り続ける人をご紹介します。
餡餅一筋にかける、枚方生まれ、根っからの郷土・枚方を愛する「くらわんか餅 NAOKI」代表森野直樹さんにくらわんか餅についてお尋ねしてみました。
――――くらわんか餅とはどんなお餅のことをいうのですか。
くらわんか餅という名称はよく知られていますが、誤解されておられる方もいらっしゃいます。餅に餡を載せ、手型を入れて握ったものが本物のくらわんか餅です。
一般に流通している焼き餅とは製法がまったく違います。
――――その歴史はどういうものですか?
昔から枚方に伝わる、くらわんか餅ですが、この郷土銘菓の由来は、くらわんか舟と切っても切り離すことができません。古来、枚方は大坂(今の大阪)と京都を結ぶ交通の要衝として栄え、江戸時代には、宿場町として、そして淀川水運の京都伏見と大坂八軒家を結ぶ「三十石船」の中継港として賑わいをみせていました。この時代、くらわんか餅が、くらわんか舟と呼ばれる商い船とともに次第に有名になり、第14代将軍・徳川家茂の京都・大坂行きの道中では、各地で様々な食べ物が献上されていましたが、その一つとして名を馳せていたのが、くらわんか餅です。
無添加・無着色にこだわる。
――――今日、市場に流れる大半のお菓子が、機械を使って大量生産されていますが、くらわんか餅 NAOKIは創業以来の手づくりを貫かれています。そのこだわりを教えてください。
手づくりにこだわるのは、無添加・無着色を信条としているからです。素材の持ち味を、美味しいうちに味わっていただきたい。菓子づくりは極めて繊細。その時季、その日によって温度や湿度などの影響で色・風味なども変わり、そのためには、微妙な加減が必要です。
――――くらわんか餅NAOKIでご提供されているくらわんか餅には色々なバリエーションがありますが、オリジナルで考えられたのでしょうか?
当店のくらわんか餅は私が消費者のニーズに合わせて考えました。店の看板商品には「元祖こし餡」を使用しています。良質の北海大豆を使用、口に運べば、雄大な大自然の恵みが広がります。 さらには、「プレミアムさつまいも」、「栗の響き」、「純しろ餡」、「枯葉きな粉」、「濃厚紅茶」、「ほんのりミルク」、「濃厚ほうじ茶」、「ゆず流れ」と味のバリエーションも豊富に取り揃えました。日本の四季の風情もたっぷり採り入れ、旬の味覚商品である「自然トいちご」、「納涼夏みかん」など、素材の魅力を最大限に生かすことを旨としています。
――――くらわんか餅NAOKIで他にこだわっていることはなんでしょうか?
店舗やパッケージにもこだわりを持っています。店舗外観や季節の趣を映す商品、優美な展示、モダンなパッケージ…。どれも、私のオリジナルの発想です。トータルでくらわんか餅の魅力を高めていきたいと思っています。
止まったらあかん
――――家業であるくらわんか餅を継がれることにしたのはどうしてでしょうか。
若い頃は、跡を継ぐなんてまったく考えていませんでした。ある時、事業継承が途絶えることに危機感を抱きました。私が継がないと、くらわんか餅はこの世から廃れてしまう。連綿と続く、この味、この技、この形を残したい。本物の価値を、多くの方々に知っていただきたい。そんな切実な思いから、老舗の看板を受け継ぐ覚悟を決めました。
――――餅づくり4代目。修業を積み、伝統の技法に固執する森野さんが思う今後の展望を教えてください。
何事も伝統の継承だけでは、明日がないと思っています。ずっと長く、くらわんか餅を愛してくださるお客様とともに、より多くの方々から支持されることが、大きな課題だと思います。“伝統”という流れの上に、“進化”という波を創っていきたい。そして、あちこちのイベントに出向き、さらに枚方とともに、名物のこのくらわんか餅のPRを広めていきたい。そのためには、絶対止まったらあかん、止まったらあかんのです。
――――お忙しいなか、貴重なお話をいただき、ありがとうございました。
インタビュー後記
枚方の住宅街の一角で、今なお“くらわんか”の伝統の味を守り続ける人がいる。餡餅一筋にかける、くらわんか餅 NAOKI代表、森野直樹さん。枚方生まれ、根っからの郷土・枚方を愛する人である。
その4代目の瞳には、一意専念、枚方の伝統銘菓を引き継ぐ、熱い使命感が満ち溢れていました。