情熱ものづくりインタビュー
ホソカワミクロン株式会社

第16回のインタビューはホソカワミクロン株式会社、代表取締役社長の細川晃平氏にご登場いただきます。

大正5(1916)年創業のホソカワミクロン株式会社は、粉体技術において世界トップクラス。国内外の工場や研究所などで、粉を扱うすべてのプロセスに関連する機器の開発や製造、販売を行っています。「粉体」を軸に、食品をはじめ医療や工業など、あらゆる産業分野にかかわってきました。枚方に本社のある企業で唯一、プライム市場に上場する会社です。さらに早い時期からグローバルなM&Aを成功させ、欧米やアジアにも多くの関連会社をもっています。

細川社長は2021年5月に、37歳で創業家4代目の社長に就任しました。コロナ禍や紛争で刻一刻と国際情勢や社会経済状況が変化するなか、事業の舵取りや推し進める社内改革、そして将来への歩みについて伺いました。

粉体技術で、世界中で活躍

粉体技術とは、どのような技術なのでしょうか。

私たちの生活の中には、たくさんの「粉」があります。例えば、ご自宅の台所には塩やコショウ、インスタントコーヒーといった粉状の食品がありますね。お薬の錠剤は、もともと粉末にしたものを押し固めたものですし、自動車部品にも大変多くの粉体技術が使われています。

もともと物質を粉にする技術は、ヨーロッパを中心に発展しました。彼らの主食はパンです。そのパンを作るのに、原料となる小麦を粉砕して小麦粉にしなければならなかったからです。

しかし現代は、ただ細かく粉砕するだけでは終わりません。粉をそのまま運ぼうとすると風で舞い上がってしまうように、運搬するだけでも手間がかかるのが粉体です。そこで粉砕したのち、粒の大きさによって選り分ける分級や複数の粉体を混ぜ合わせる混合、造粒、乾燥、集塵、そして供給・排出・輸送、測定まで、粉体の種類と目的に応じて、粉を扱うすべてのプロセスに関係する機器を開発してきました。それらはお客様の工場や、研究所などでも活用いただいています。

粉体技術は多様な産業分野に必要なので、もしどこかの産業分野が不景気になっても、大きな影響が出にくいのが強みです。

top(粉体技術)

粉体技術の他にも、さまざまな事業を展開されています。

粉体関連事業の他に、プラスチック薄膜事業も展開しており、食品の包装や電子機器を保護するための特殊なフィルムの製造装置を製造しています。いろいろな特性持つ樹脂を何層も重ね一体化させた、高機能の多層フィルムが特徴で、幅広い産業分野で使われています。酸素が遮断できるので医療現場、最近ではコロナ禍でリスクの高い廃棄物を入れる袋として需要が高まりました。食品分野なら包むことでバクテリアの繁殖を防ぐことができ、食品の長期保存が可能です。

私たちは装置を販売するだけでなく、原料をお預かりして粉体の加工も行っています。受託加工です。原料を希望の状態に粉体加工して出荷するのです。お客様がわざわざ粉体にかかわる高価な装置を購入せずに済むので、短期の製造や増産、少量や多品種生産にも対応できます。また変化の速い今は、10年や20年、同じ機械で生産し続けることがリスクになりかねない時代ですから、そうしたリスク対策にも利用いただいています。

早い時期に積極的な海外展開のわけ

国内の事業所をはじめ、海外に数多くのグループ会社をお持ちです。どのように展開したのでしょうか。
また海外に会社を持つ利点を教えてください。

欧州にはドイツ、オランダ、イギリスなど8か国。あとアメリカと中南米3か国、そしてアジアは中国、韓国、マレーシアとインドにグループ会社を持っています。

1980年代より世界各国や各大陸のナンバーワン企業を買収して展開しました。いわゆるM&Aです。現在5か国に軸となるマザーカンパニーを置きながら、現地の子会社に権限を委譲する現地経営を行っています。

権限を委譲する理由の一つは、産業装置を扱っていることです。各国の安全基準をクリアできる装置の製造や、さらにカスタマイズまで行うのは大変です。各グループ会社に任せれば、長年培ってきた彼らの知見が活かせますし、たとえウクライナ紛争のような事態が勃発しても、欧州以外の地域は自分たちの国や大陸のマーケットを意識し、独自の判断で動くことができます。

この事業体制のおかげで、コロナ禍でも各社にいる現地出身の社長がその国のルールに則り、素早い意思決定ができました。

世界地図202209

互いの結束は、どのように保っているのですか。

全社共通のマネジメントポリシーガイドラインを持っていて、それで意識の統一を図っています。ちなみに冒頭に掲げているのが「カスタマーファースト」。時々、大陸をまたいでグループ会社間で競合することもありますが、私たちはお客様がやりたいことを実現できる提案、またはフィットする提案を第一にするという共通認識で動いています。

つねに未来を見据えた事業戦略 一歩一歩前へ進む職場づくり

御社のDXへの取り組みが注目されています。

2014年に、イギリス子会社の社長が初めてDXを提唱してくれたのが最初です。以来、現在まで業務におけるDXの促進化に取り組み続けています。

デジタル化はすぐにでもできますが、時間がかかったのはトランスフォーメーションです。実現するには、世の中の仕組みと共に、自社においても事業形態を大きく変える必要があるからです。

2年ほど前から、DXを軸にした私たちの付加価値がようやく形になってきました。2021年にはAIやIoT、Big Data を用いて粉体処理に特化した最先端管理ツールである「HOSOKAWA GEN4」を開発しました。しかしこれらも、DXの中のほんのごく一部です。全容の発表は、もう少しお待ちください。

tech3(HOSOKAWA GEN4)

楽しみです。SDGsへの取り組みはいかがですか。

植物肉shutterstock_1760578460

例えば人工肉です。ご存知のように植物から作る肉ですが、えんどう豆から作る場合はまず、豆を粉砕します。粒の大きなものと細かいものとに分かれるのですが、実は研究で、細かい方に非常に多くのたんぱく質が含まれていることがわかっています。それらを集めれば、たんぱく質の豊富な人工肉を作ることが可能です。

CO2を抑えながら栄養価の高い人工肉が提供できるなど、これまでの知見と技術を生かす形でSDGsに貢献できると考えています。

従業員が働きやすい職場づくりにも積極的だそうですね。

福利厚生や職場づくりは、まさに「一歩一歩」。時代より一歩先を進んだ制度を導入して、従業員と共に一歩ずつ良いように作っていくイメージで、「去年より良くなった」という実感を、毎年積み重ねています。

例えば以前から導入していた育児休業制度は、10年前は男性の利用者が皆無でした。しかし5年前に1人が取得してくれたおかげで、以来利用者が増え、今では対象者の半数以上が利用しています。育休やフレックス制度を浸透させるには、制度取得の明確な基準をきちんと示すことが重要だと考えています。

従業員には、関西出身者が多いそうですね。

直近の5年間とそれ以前の5年間とで採用者を比較したとき、地元出身者が1.6倍も増えました。

理由はさまざまですが、当社は2022年4月に時価総額の大きな企業を対象とするプライム市場に上場しました。枚方市に本社機能を持つ企業では、ホソカワミクロンだけ。地元枚方で、上場企業で働けることに魅力を感じる人もいるでしょう。

また、関西には昔から粉体工学の講座を持つ大学が多く、それも応募が多い理由でしょう。

また当社は若い方に枚方に住んで欲しいと、通勤に1時間30分以上かかる社員に、市内に寮を用意しています。枚方に愛着を持つ人間も多く、地域貢献の一端を担えたらと思っています。

photo 5@4階 カフェテリア_7

カフェテリア

大事なのは原理原則

30代での社長就任だそうですね。

37歳で就任いたしました。2021年4月1日に、現在の井上副社長と共に今の会長に呼ばれて「ワシ、社長辞めて会長になるから、あとをよろしく」と。実は祖父も父も私と同じ年齢の頃に社長になったのですが、自分はまだまだと思っていたので、エイプリルフールかとすぐに実感が湧きませんでしたね。

しかし当時、2人とも取締役副社長で私が事業系、井上が管理系を見る立場でしたので、業務においてはスムーズな承継が行えたと思います。

細川社長が大切にしていることを教えてください。

「原理原則を大事にする」です。何事も原理原則があります。その上にこれまでのやり方を踏襲して再現性のある「一般解」があり、その上に条件によって変化する応用編の「特殊解」があります。特殊解だけを覚えても、基本がぐらついているので知識や行動に統一性がありません。まず原理原則があって次に一般解、そして特殊解という三段論法が大事です。

製造業の原理原則は、基本的に安く作って高く売って利益を出すことです。例えば、現在行っている作業は製品を安く作るための努力かどうか。あるいは、お客様が私たちの高付加価値を認めてくださるような活動ができているかどうか。そういう身近な事例をもとに、従業員たちにも原理原則の大切さを話しています。

photo 2@工場内部
core3(メンテナンスサービス)

ホソカワミクロンが描く将来のビジョンを教えてください。

まずはこれから10年間で、会社が蓄えたノウハウを、若い世代にどれだけきちんと伝えられるか。これがポイントだと思っています。

恐らく、特に製造業は同じ事情を抱えていると思いますが、バブル期に入社されて現在50歳以上の従業員の方々は、10年後にそのほとんどが退職でいなくなります。その後は就職氷河期やリーマンショック、東日本の震災などで採用人数に大きな波があります。そういうなかでバブル世代の方々がいなくなるインパクトは、無視できません。特に私たちのような、オーバーホールを含めて20年から30年、長くて40年も使っていただく、寿命の長い製品を扱う企業ほど、ノウハウの伝達に力を入れなければ、10年後は非常に厳しくなります。「あの人がいなくなったら、もうわからない」などということのないように準備するのが、今後10年間の日本の課題でしょう。

対して欧米は経済の成長率が非常に高いので、新興国に対する戦略的アプローチがしやすいでしょう。日本が課題克服に取り組むなか、海外にグループ会社の多い私たちのような業態は有利です。自分たちのみならず、お客様のスムーズな事業継承に私たちが寄与できればと思っています。

photo 1@既設棟から東面外観(1期)_2
photo 3@1階 工場C・D_1

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ホソカワミクロン株式会社

〒573-1132 大阪府枚方市招提田近1丁目9番地

公式ホームページはこちら

近隣のショッピングモールのテラスから見える、大きくそびえ立つホソカワミクロン本社ビル

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